聖天使アルテマを真の意味で究極生命体
にする考察
FFTと言えば、重厚なストーリーと並び、奥の深いシステムの誉れ高きゲームである。その奥深さゆえに、FFTは世間一般的に「高難易度ゲーム」に属している。発売当初はネット上でも各所でプレイヤーたちの「悲鳴」があがったものだ。
しかしながら、様々な困難を乗り越え、ついにエンディングを迎えたときに思うのは「最初の方は難しかったけど、最後の方は簡単だったよね」といったものではないだろうか。実際、ラストバトルよりもChapter3終了直前のランベリー城連戦の方が難しいと考える人は多いし、少なくとも私はそう思う。せっかく後戻りの出来ない死地へ辿り着き、そして初めて姿を現した全ての黒幕、最強無敵であるはずのラスボス「アルテマ様」は、その見かけの強烈さとは裏腹に、さっぱり弱かった。いや、決して弱くはないのだろうが、既にオルランドゥだのベイオウーフだのと言った反則的キャラがパーティの主力を牛耳っている中で、あの能力ではあまりにも力不足というものであった。
ラスボスの弱体化はFFTならずともゲーム界共通の流れであるが、その代わりにFF5の「オメガ」や「神竜」といった、ラスボスを遙かに凌駕する裏ボスがちゃんと用意されており、熟練プレイヤーたちにも楽しめるよう配慮されている。ところが、FFTの裏ボスと言えば、ディープダンジョン最深部の「エリディブス君」。彼ときたら、まだテマ様の方が強いんじゃないだろうかと思えるほどの弱さだった。というか、正直なところそこらのボスよりもフィナス河の赤チョコボ軍団の方がよっぽど手強い。
こんな情けない話があってよいものだろうか。否、決してよくない。誰が許そうとも私が許さん。テマ様には文字通り、現世の善悪正邪を超越
し、地上に混沌と秩序、終末と創世をもたらす
究極生命体
となっていただきたい。随分前置きが長くなってしまったが、じゃあそのためには具体的にどんなパワーアップを遂げれば良いのか、というのが今回の題である。
具体的な方針を考える前に、まずは現行のテマ様のパラメータから見ていただき、問題の深刻さを再認識してもらうことにしよう。ラスボスのステータスなど、本来ゲーム中には見ることの出来ないデータであるが、偉大なるプレイヤーの方々の手によって、今日ほぼ完全に解明されている。誠にありがたい話である。
ステータス | 聖天使アルテマ | 聖大天使アルテマ |
---|---|---|
LV | 56 | 66 |
Brave/Faith | 70/70 | 70/60 |
HP/MP | 1320〜1380/438〜480 | 3160〜3260/405〜445 |
Speed | 9 | 9 |
A/MA | 13/12 | 13/12 |
耐性 | 暗闇・スロウ・ドンアク以外の全て | 暗闇・スロウ・ドンアク以外の全て |
Aアビリティ | 究極魔法・混沌 | 完全魔法・完全飽和 |
RAアビリティ | 使用MP吸収 | フェイスアップ |
Spアビリティ | 格闘・ショートチャージ | 格闘・ショートチャージ |
Mvアビリティ | ダテレポ | ダテレポ |
30×魔法攻撃力×アルテマのFaith×対象のFaith
のダメージ(Speed10、リフレク無効、魔法回避率無効、ダメージは相性を1段階良好として計算する)全員に55×魔法攻撃力×アルテマのFaith×対象のFaith
のダメージ(Speed7、リフレク無効、魔法回避率無効)どうだろう。いよいよテマ様の駄目具合が理解していただけただろうか。
とまあこのほかにも色々問題がありすぎである。これでは、自らの腹をかっさばくまでして再臨に尽くしたハシュマリムがあまりにも可哀想だ。せっかくの奥深きバトルシステムをどう生かせというのか。ウィーグラフとかキュクレインとか、それまでの強敵たちの立場はどこにあるのか。そして何より、こんな情けないヤツに混沌と秩序、終末と創世
を司られたイヴァリースの民たちの思いはどうすりゃいいのか。
ダメだダメだッ! それもこれも、全てはラスボスが弱すぎるがために起こった悲劇である。これ以上悲しみが繰り返されないためにも、ここでしっかりと虚栄の闇を払い真実なる姿をあらわ
した聖天使・聖大天使「アルテマ」を白日の下にさらし、私を含めた全ての愚かなプレイヤーたちをあまねくひれ伏させなければならない。
そこでまずは基本的な強化指針なのだが、取り敢ず聖天使バージョンの方は現行のままラスボスを任せてもらうとして、聖大天使(骨テマ)バージョンの方は、裏ボスとしてより兇悪なパワーアップを目論むことにする。こちらは、聖天使アルテマを倒し、そして聖石を13個集めたとき――即ち全ての隠しイベントをクリアした時――に初めて姿を現すものとするのだ。その方が「最強の存在」としてより強烈な印象をもたらすことだろう。
そういうわけで、表ボスである聖天使バージョンの強化方針は「ムチャクチャ強いけど、頑張って自軍を強化して準備もばっちり整えて戦略も完璧に立てれば、倒せないこともない」程度の強さとする。まあ目安としては不浄王キュクレイン戦や魔人ベリアス連戦辺りより少し難しいぐらいの難易度を目指したい。これならばラストに相応しい壮絶なバトルが期待出来るだろう。但し、存在しない新しいアビリティは創作しないことにする。なんでもアリというのもつまらないものだ。
キュクレインとベリアス――この二者には随分苦労させられたものであるし、これを読んでいる読者諸氏もきっと苦労しただろう。してないと悲しい。そこで、以下にそのステータスを例によって偉大なる先人達の研究より引用しよう。
ステータス | 不浄王キュクレイン | 魔人ベリアス |
---|---|---|
LV | 20 | 31 |
Brave/Faith | 70/70 | 70/70 |
HP/MP | 480〜510/348〜366 | 1052〜1112/258〜282 |
Speed | 9 | 9 |
A/MA | 10/8 | 13/13 |
耐性 | 暗闇・スロウ・ドンムブ以外の全て | 暗闇・沈黙・スロウ・ドンムブ以外の全て |
Aアビリティ | 不浄・恐怖 | 魔人召喚・恐怖 |
RAアビリティ | なし | なし |
Spアビリティ | 格闘・ショートチャージ | 格闘・ショートチャージ |
Mvアビリティ | なし | なし |
なんだか、改めて見るとその反則具合が克明に浮き出てくるなァ……。
それはともかくとして、まずはLV。少し意外だが、キュクレインが20でベリアスが31と、大体パーティの平均レベル辺りに設定されているようだ。チョコボの不思議なデータディスクのラストバトル寸前データによると、大体スクウェア的にはラストバトル時でLV60-70ぐらいを想定しているらしい。そう考えれば、聖大天使のLV65はまあ妥当なところだろう。BraveとFaithは現行の70のままで十分。続いてHPであるが、キュクレインは480〜510、ベリアスが1052〜1112と、その頃のパーティの平均ダメージ量の大体10倍ぐらいだろうか。となると、アルテマには少なくとも4000〜5000は欲しいところだ。MPはこの際どうでも良いのだが、魔吸唱の回復量にも影響するのでまあ1000ぐらいはあってもバチは当たるまい。
Speedもパーティ平均値ということで、13辺りが無難なところだろう。あまり早すぎると攻撃力が倍増するので今度は倒せなくなってしまう。何とか魔法が当てられるぐらいのSpeedが丁度良い。物理攻撃力はキュクレイン・ベリアスの経験から、大体一回の通常攻撃で魔道士系を即死に出来るぐらいがボスらしくて良い。魔道士系を即死となれば250ダメージぐらいなので、逆算すると大体16ぐらいとなる。魔法攻撃の方はチャージが入るのだからより強烈でしかるべきだ。魔人ベリアスのクリュプスの280ダメージ辺りで考えると、大体物理攻撃177ダメージの1.6倍であるので、これを素直に適応すれば400ダメージだが、効果範囲からみて流石に全滅してしまう虞があるので、少しまけて300ダメージ辺りで手を打とう。どうせ相性が一段上で計算されるため、結局400近いダメージになる。逆算すると魔法攻撃力は20辺りとなる。チャージスピードはショートチャージ込みで20なのだから、まあこのままで良いだろう。グランドクロスは現行のままでも十分強力である。
あと、リアクションアビリティの使用MP吸収というのはあまり意味がない気がする。ここは「Speedセーブ」なんてどうだろうか。これなら下手な攻撃は却って相手を強くしてしまうなんてパラドックスまで生み出してくれる。なんだかますます一撃の大きいオルランドゥのウェイトが大きくなりそうな気もしないではないが、ボスが強ければ強いほど彼の重要度は嫌が応にも増してしまうので仕方がない。その代わり、サポートアビリティには防禦力Upをつけることで対抗することにする。当然ショートチャージと格闘もセットだ。ムーブはダテレポが最強なのでこのままで十分。
もちろん、いくら強くしたところでドンアクが効いてしまうようではお話にならないので、全ての有害ステータスは無効ということにする。ホーリー対策として聖属性も無効。むしろ吸収でも良いくらいだ。
さて、これらの要素を加味した真・聖天使アルテマのステータスは以下の通りである。
ステータス | 聖天使アルテマ |
---|---|
LV | 65 |
Brave/Faith | 70/70 |
HP/MP | 4000〜5000/1000 |
Speed | 13 |
A/MA | 16/20 |
耐性 | 全て |
Aアビリティ | 究極魔法・混沌 |
RAアビリティ | Speedセーブ |
Spアビリティ | 格闘・ショートチャージ・防禦力Up |
Mvアビリティ | ダテレポ |
パッと見た感じあまり変わってないように思えるが、実は相当パワーアップしている。恐らく初見はおろか2、3回は全滅するだろう。特にSpeed値とMA値の増加が攻撃力を劇的に増加させている。究極魔法アルテマでみると実質2.4倍にもふくれあがっているのだ。これならハシュマリムも安心して魔界に凱旋出来るというものだろう。ヨカッタヨカッタ。
さて、裏ボスとなった骨テマの方だが、こちらはもうデタラメに強くしてしまおう。LV99どころか、ドーピングや武器増殖バグなどに手を染めない限りまず倒せないぐらいに強化する。
LVは当然99。HPはドーンと7000とする。これだけでもかなりトンでもないバケモノだが、まだまだこれからだ。完全アルテマの平均ダメージを600ぐらいにするため、魔法攻撃力は22。物理攻撃なんてこの際気にする必要もないが、一発450ダメージを目指して20とする。Speedは15ぐらいが兇悪でいいだろう。
完全魔法・完全飽和は現行のままでも良い気がするが、一部のチャージタイムを若干早くする。完全アルテマは10、リタンジャは25、デスペジャは50とする。グランドクロスの効果発動確率はそれぞれ50%でも良いかも知れない。くさい息以上のエグ技。リボンは必須である。
もちろん有害ステータスなんてそんな軟弱なものは一切無効。聖属性も無効。リッチ・命吸唱対策として割合ダメージも無効とする。さらに永久プロテス・シェル・リジェネを附与する。これで毎ターン700近くの回復が約束される上に、残りのHPを推測してどこまで自分が戦えたのかを測る指標にもなる。
リアクションアビリティはSpeedセーブでも良い気がするが、HPを0にする前にSpeedが50ぐらいになってしまいかねないので、他のものにしてあげよう。そんなヤツ。ドーピングしたって倒せやしない。「潜伏」という手も考えはしたが、やっぱりこれも強力すぎるだろう。というか、リジェネと組み合わせたら絶対に倒せなくなってしまう。ここはダメージ分配なんてどうだろうか。かなり強烈な反撃アビリティになることは間違いない。Braveは発動確率を上げるために80としよう。ほとんど神に逆らう愚者状態である。
サポートアビリティにチャージタイムを0にする「ノンチャージ」をセットしても良かったのだが、さすがにあの完全アルテマを連発されると、自軍のHPが999でカンストしてしまうFFTではとても耐えられまい。ここはショートチャージで我慢してもらうことにする。防禦力Upは言うに及ばず、格闘。あと魔法防禦力Upもつける。すぐダメージ値がカンストしてしまうFFT特有の事情から、HPの強化よりも守備力の強化を念頭に置きたいのである。ムーブはダテレポのまま。
さあ、これらの要素を加味した真・聖大天使アルテマの全容は如何ほどか。
ステータス | 聖大天使アルテマ |
---|---|
LV | 99 |
Brave/Faith | 80/80 |
HP/MP | 7000/3000 |
Speed | 15 |
A/MA | 20/22 |
耐性 | 全て |
状態 | 永久プロテス・永久シェル・永久リジェネ |
Aアビリティ | 完全魔法・完全飽和 |
RAアビリティ | ダメージ分配 |
Spアビリティ | 格闘・ショートチャージ・防禦力Up・魔法防禦力Up |
Mvアビリティ | ダテレポ |
こりゃトンでもない。考えた自分でさえ恐怖しそうな神が誕生した。
まず戦闘開始直後に完全アルテマが飛んでくる。運悪く対象になったユニットとSpeedが7以下のユニット、そしてMoveが3以下のユニットはそれだけで逃げ遅れて全滅だ。下手するとこれだけで戦闘が終わってしまうかも知れない。
よしんば完全アルテマを何とかしのいだところで、すぐ第二波が発動する。回復には算術アレイズ役と算術ケアルガ役の二名が必要だろう。たとえオルランドゥが渾身の力をこめた聖光爆裂破を放ったとしても、防禦力Upとプロテスによってダメージは1/3にまで減殺されてしまう。999ダメージを与えるためにはカオスブレード装備で物理攻撃力が66も必要である。ドーピングは必須事項だ。……おいおい、ホントに倒せるのか? こんなヤツ。
「ホントに倒せるのか?」
そう考えると、とたんに私の中のFFT魂が熱くなってきた。よぉし、せっかく全てを震撼させる恐怖の神が誕生したのだ。絶対こいつを倒す方法を見つけてやる。――なんだか、最初の目的から外れているような気もしないではないが、気にしないでおこう。
まずリアクションアビリティのダメージ分配が非常に厄介だ。こいつがある限り、攻撃を加える度に半分が返ってくる上に回復までされてしまう。実質ダメージ量が半分になるということだ。おまけに毎ターン体力が1割も回復する。どないせいっちゅうねん。……ん? そういえばダメージ分配の発動条件はHPダメージであった。とすると、マインドブレイクではダメージ分配が発動しないということになりはしないだろうか? となれば話は簡単だ。まず戦闘開始と同時に骨テマを忍者軍団で囲み、二刀流マインドブレイクで魔力を滅殺してしまえば、もはやただHPが高いだけの木偶の坊と化す。勝利は時間の問題だ。
――ダメじゃんそれじゃ! 嫌だ嫌だ、そんな簡単に倒せるようでは面白みもなにもあったものじゃない。ええい、ならばリアクションアビリティに「白羽取り」もセットしよう。白羽取りの発動条件は全ての物理攻撃。ブレイク系も勿論シャットアウトだ。
これで、強烈な完全アルテマがばんばん飛んでくることになった。ロードオブロードでも着ていない限り、魔道士系ジョブは確実に即死だろう。白羽取りセットのため、マインドブレイクの成功率は果てしなく低い。物理攻撃力15のユニットが後ろから仕掛けた場合成功率は7%。ダメージ分配以上に厄介である。確実に攻撃を通すためには二刀流をセットするしかない。
こうなったら、魔法剣「チキン」や陰陽術の「狐鶏鼠」さらには話術の「おどす」などを駆使してアルテマのBraveを下げてしまおう。テマ様はBraveが0になってもチキン化しないが、白羽取りもダメージ分配も発動しなくなる。これで安心してマインドブレイクを仕掛ければ良いのだ。……あれ、あれれ?? やっぱり簡単に倒せちゃうじゃん。むぅ、ならば骨テマ様にはBraveダウン系無効という特権を附与することにする! 苦情ハ一切受ケ付ケマセン。
これはいよいよ大変になった。頼みのBraveダウンも封印され、反撃はほぼ確実(80%)となった。のんびり回復しながら攻撃しても良いが、下手にHPが減っていると完全アルテマによって即死されかねない。これで必勝法は全部ついえたハズだ。
……いやいやいや、マテよ。いくら強力な回避力を持っていたとしても、攻撃手段がアルテマと直接攻撃に限定されていれば案外なんとかなるかも知れない。具体的にはこうだ。
嗚呼、まだ必勝法が眠っていたのか。FFTがいかに奥の深いゲームかということを改めて再認識させられる。よしならば、骨テマは闇魔術の「アルマゲスト」と「ナノフレア」を使えるものとしよう。手下の使える魔法ぐらい、テマ様にすればきっと朝飯前に決まっている。そうすればHP差分で反則的なダメージが飛んでくるし、ナノフレアもFaith無視で広範囲に297ダメージ。威力は劣るがチャージタイムがないぶん十分に驚異だ。
これで骨テマ様を倒す策は本当に尽きたはず。自分でどんどん隙を埋めてるんだから当然の結果かも知れないが、これだけ強ければ倒しがいもあるというもの。多分、Speedを20ぐらいまで根性で上げてヘイスト1.5倍速、かつ瀕死HP回復当たりを併用しながら地道に二刀流攻撃と回避率無視の攻撃を繰り出していくしか勝利の道はないだろう。血の滲むような努力の末に勝利したあかつきには、ウォージリスの酒場で盛大な祝杯をあげよう。
とまあ、こういう風に最強の敵を考えるのは案外面白いので、FFTのぬるい敵達に飽き飽きしている方たちには是非、これに負けない最強のテマ様を考案して欲しい。きっとこの考察のような新しい発見があるはずだ。
久樹 輝幸